思い出したよ。描けなくなったこと、昔あったな。あの時は絵は継続して描けたけど、「話」が数年描けなくなった。
私は小学2年生、3年生のときに自由帳に漫画を描いてたんだ。雨の日は学校の休み時間に漫画が描けるから嬉しかった。
当時、さとこちゃんって仲良しの子がいた。
さとこちゃんは私の漫画を読んでくれた。さとこちゃんは習い事の多い子で、週に一度しか遊べなかった。その日が待ち遠しくて仕方無かった。散歩しておしゃべりしたり、ボール遊びしたりしたな。
ある雨の日、休み時間に自分の自由帳から顔を上げたとき、さとこちゃんの机の回りに人だかりができていた。
近寄って見てみると⋯⋯
さとこちゃんの自由帳に私の漫画のキャラをそのまま使った漫画が描いてあった。その漫画を読むために人だかりができてたんだ。
純粋に嬉しかったよ。
さとこちゃんは私の世界が本当に好きなんだって分かったから。
そして、キャラは私の漫画のものだけど話はさとこちゃんのオリジナル、しかも私より絵が巧い!
私はさとこちゃんに心から「上手だね!面白いね!」って言った。
それからさとこちゃんは私に対してよそよそしくなった。一緒に遊ぶこともなくなってしまった。
私は
「もうこんな思い二度としたくない」
「あんな漫画、いくらでもくれてやるのに。ずっと一緒に遊びたかった」
そう思った。
さとこちゃんは「すごい」「真似したい」っていう純粋な気持ちで描いてくれたのだと思う。でも、私に見つかって褒められた瞬間、さとこちゃんの心が「どう思われるだろう⋯」とそわそわした。心の中の何かが動いてしまった。
あの時、私が小学生らしく「真似しないでよ!」とでも言えば、友人関係は長続きしたのかもしれない。
でも仕方無い、私はそんなこと全く思わなかったんだから。さとこちゃんだって悪くない。描きたいものを描かないでいるなんて出来ないのだから。しかもストーリーはさとこちゃんのオリジナルだったんだ! 当時だって今だって、私に彼女を責める気持ちは微塵もない。
もし、この先、誰かが私の姿を借りて何かを描きたくなったら、私はいいよって言うよ、許可もいらない。私を通してその先にあるものが描けるなら躊躇わずに描きなよ。それがさとこちゃんへの返事になる。