『ヒワとゾウガメ』とともに私が大事にしている絵本、それが『クリスマスのうた -きよしこの夜-』ジーノ・ガビオリ 絵/リーノ・ランジオ 作/わきた あきこ 文 (女子パウロ会)だ。こちらは私が幼児の頃に親から与えられた本。
うちは日本の家庭によくある「一応仏教です」という家で、クリスチャンではない。なのになぜ女子パウロ会の絵本があるのか。
それは私の親が仕事の都合で女子修道院と付き合いがあったからだ。その付き合いで買った絵本が私に回ってきた、それだけのことである。
引っ越したとき、結婚したとき、私はこの絵本を捨てられなかった。クリスマスの絵本なんて、一番に捨てていいはずのものだったのに。
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この絵本は三つの部分から成る。
・イエス・キリストの生誕の話
・『きよしこの夜』誕生の話
・『きよしこの夜』が歌い継がれていく話
主題は『きよしこの夜』誕生の話で、これが全体ページの半分を占める。
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“村の きょうかいの ヨーゼフ・モールしんぷさんは、こどもたちを あつめて、クリスマスの うたの おけいこ”
“あれっ? へんな音だな”
“うわ! たいへん!”
“オルガンの パイプは ねずみにかじられて、「あーあ、これじゃ 音が出ないはず」”
“モールしんぷさんは しばらく しょんぼり おいのりを して いました。そのとき、「あっ、フランツが いるじゃないか」と、モールしんぷさんの あたまに ひらめいたのは、村の学校で先生をしている ともだちの フランツ・グルーバーさんの こと。”
“「クリスマスの夜には どうしても うたが いるんだよ。オルガンがなくても うたえるような やさしいきれいなうた⋯⋯。ぼくは うたのことばを かいてきた。きみの ギターで メロディーを つけて くれないか」”
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そう、この本は「創作について書かれた本」、歌を「作った」人たちの話なのだ。
幼児の私は「メロディーをつけてくれないか」という神父の言葉に神経を直接触られるような感覚を覚えた。
これは私が「作る」ことに強い興味を抱いたきっかけの本。
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“「すてきなうただ」と みんな言いました。「きっと、ゆうめいな 人が つくったんだよ」とある人たちはいいました。でも、ほんとうに だれが つくったかは、ながいこと 忘れられて いたのです。”